第Ⅲ章

アメリカから日本に帰ってきて、教師になると思うんですけど。
徳野
はいはい。
社会科系って、実際にこの授業を教えたいっていう感じで教職をはじめられたんですか?
徳野
いや、もう自分の場合は明確で。人種差別と戦うために教員やったので。
だから世界史だったわけですよ。
徳野
英語とかでも良いのかなとも思ったんですが、社会科の方からアプローチをしたい、歴史的にそれを紐解きたい、世界史だっていうところで。教員採用試験でも、 神奈川なぜ選んだのかっていう時に、やっぱヘイトスピーチの問題が、自分が教員になった時には、もうすごかった。
川崎とか鶴見地区ですよね。その地域での朝鮮人差別とかヘイトスピーチはものすごくて。やっぱそれと向き合いたいっていうのがあって。教員採用試験でそのまま言って、そしたら最初の学校、鶴見に行かせてくれたので。はい、あそこはありがたかったかなと思いますねえ。
全然知らなかったですよ、そんなの。そうだったんですね。
徳野
言葉っていうのはどれだけの人を傷つけてると思ってるんだろうかっていうのは、やっぱそれは教員っていう人間の問題なので、教員になってなくてもそうだったのかもしれないが、機会を与えてもらったかなとは思ってます。
そのアメリカ行ったのが20代。 なんか大学卒業してからの転機とおっしゃってたんですけど、なんか他に転機になりそうなことってありますかね。
徳野
いくつか自分の人生にとって大きかったなって思うことはあったりしますね。まあまあ、もちろんそれは 色々あるんですが。ちょっとね、話せないことも。
高校の先生になってから、どう人生が変化したかをちょっと聞きたいんですけど。 初めて授業を持った時とかって、どういう感じでした。
徳野
それは割とですね。僕はあまり気負いがなかったというか、塾講師をやってたので、あまり授業っていうものに対する気負いはなかったというか。うん、楽しかった。
先生ってもう高校の教師にやられてから、もう何年ぐらいになります?
徳野
今年で9年目ぐらいですかね。来年9年目か。
結構長くやってますね。
徳野
そうですね。自分でもこんなに長くなるとは思ってなかったですね。30前にはやめるかなと思ってたら。
はいはい。
徳野
今でも毎年辞めようと思っていて。
その、なんかやめられない理由とかってあるんです。
徳野
なんだろうなこれっていう理由はないんですが、いろんな人生のタイミングですかね。今は
徳野
こう、この4年間ぐらいはずっと大学院に通い直していたので、そのお金も稼がなきゃいけなかったし。
こう、学ぶっていう学問に近い場所で働けるっていう意味では、高校は一般企業よりは大学院に通いやすいところだと思っているので。公務員なので、5時には一応仕事は終わるしね。
はい。
徳野
この4年ぐらいはずっとそれがありましたかね。この後は博士課程に行きたいなと思っているので、博士行くってなったらやめるかみたいな、
今ちょっとお話しされた、その大学院に通い直すっていうことなんですけど、 それっていつ頃からですか。
徳野
21年からですね。普通は2年なんですけど、僕はちょっと働きながらなので、 4年にしてもらって、4年間、今年まで通ってます。
院に通い直そうって思ったきっかけとかってあります。
徳野
やっぱそれはあれですね、アメリカに行った時に、やっぱ自分自体、黒人史をやりたいんだっていうことに改めて気づいたので。
改めて気づいたっていうか、なんだろう、自分はそう思っててよかったんだと気づいたので。
はい。
徳野
お金が貯まったら大学院に行こうとその時から思っていて。1個目はね、どうしても最初の学校で色々覚えることも多かったし、なかなか行く時間がなかったんですけど。はじめ終わった段階で、じゃあ自分のやりたいこともやろうと思って入り直した感じで。
学校の先生やりながら院通うのって結構大変だと思うんですけど。
徳野
うん、大変なのは大変。
体力的には非常に大変だったし、色々な時間がないし、ストレスも溜まるし、色々大変でしたけど、でも。 いや、自分で選んだことなのでね。
どっちもね。他人から強要されたことだったら耐えれなかったと思うけど。
両立する中で辛いことも多分あると思うんですけど、その時心の支えになったのとかって、やっぱり自分で人種問題について研究して向き合いたいっていう、そういう気持ちなんですかね。
徳野
いや、別に僕はそんな強い人間ではないので、しんどい時はしんどいなってなってましたし。むしろそういう時の支えっていうのは、やっぱその時々に周りにいてくれた人たちだと思いますね。
はい。
徳野
高校の先生を始めてどう変わったかっていうとこなんですけど、あんまり、根本的な変化はなんかない感じですかね。
してると言われればしてるのかもしれないが、自分ではあんまり自覚してないですね。
教師を始めて9年目ってことなんですけど、9年間振り返ってみて、どうですか。
徳野
教師としての9年間での感想で言うと、長かったなと思います。長かったし、毎年正直辞めたいと思ってます。僕はね。
うんうん。
徳野
なぜだか続けちゃってるけど、いつの間にか9年目まで来ちゃったなっていう、そんな感じで。
徳野先生、本日はインタビューにご協力いただきありがとうございました。

閲覧ありがとうございました